パリのイワシ（Sardine)は日本のマイワシに似ていますが、もう少しニシンに近く、腹骨が多いので、ハラワタを出すときに腹が裂きにくい魚です。

全体的に日本の魚屋で売っているイワシよりサイズが小さいのですが、日本のイワシより脂が乗っており、味は日本のイワシより上かもしれません。値段も安く、一キロ買うと12〜13匹買えて、値段は3eur強なので、本当に庶民の味方の魚です。

店頭ではほぼ一年中販売されていますが、春から秋にかけてが入荷量も多く、新鮮なものが手に入りやすいようです。特に秋は産卵期にあたり、脂も乗って、塩焼きに最適です。

イワシは痛みやすい魚ですので、鮮度を見分けるのが重要です。ポイントは、うろこの残り具合、身の硬さ、内臓の張りなどですが、内臓の張りは買って持ち帰らないと分からないので、店頭で新鮮に見えても、持ち帰るとだめだということもあります。鮮度の良いものは刺身でも美味しく食べられます。但し、サバによく見られるアニサキスという寄生虫がごく稀に内蔵にいることがあるので、腹を割いたときに内臓を確認すると良いでしょう。（この寄生虫についてはサバの項参照。）

Sardineの仲間としてSprat と　Allache(Sardinelle)がいます。Spratは小型のイワシで地中海のみで採れ、通常15cm程度で、体側中央に一本の黄色い縦線が見られます。Allacheは大型のイワシで、30cm程度になり、体側に金色の帯状の模様が見られます。この両種とも市場を流通しているはずですが、まだ魚屋では見たことがありません。

Shadineという名で日本のウルメイワシに近い種も流通しているようですが、これもまだ見たことがありません。

カタクチイワシ（Anchois)はニシン目カタクチイワシ科の魚です。マイワシと違い、パリのカタクチイワシは日本のカタクチイワシとほぼ同種と考えてよいでしょう。

イワシに比べて店頭に出ている確率は少なく、出ていても鮮度が落ちている場合が多いので注意が必要です。春と秋に店頭で多く見られますが、夏はあまり出ていないようです。

 大西洋でも、マイワシの群れにカタクチイワシが混ざることがあるようで、両方が一緒に売られていることもあります。当然ながら手開きの刺身が美味しいのですが、刺身に出来る新鮮なものが手に入ることはなかなかありません。

トウゴロウイワシ（Athérine）はボラ目トウゴロウイワシ科の魚で、イワシとは別種の魚ですが、日本でも欧州でもイワシの仲間のように扱われています。パリでは地中海産のJoëlと大西洋産のPrêtreの二つの名前が使い分けられているようですが、Prêtreが両者に使われている可能性もあります。ジュネーブではAquadelleの名でトウゴロウイワシが売っていますが、これは地中海産の2種のどちらかと思われます。いずれにせよ、日本のトウゴロウイワシとはかなり違って美味しい魚です。

このうち、Prêtreはキュウリウオ科のÉperlanと混同されており、両者がこの名で販売されていることも多いようです。唐揚、素揚げ、てんぷらなどでおいしく食べる事が出来ます。

マイワシ（参考）